住み心地

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家の住み心地について熟考します

家は三軒建てないと満足しないと言われますが、四軒の注文住宅を建てた現在の自分の心境を述べてみたいと思います。

家の住み心地とは家を快適すぎるほどに快適にすることなのか、不自由さや気温の変化などを家作りに取り入れて気付きを得る場所にすることなのか、何が本当に大切なことなのか家作りは色々と考えさせられます。

人は家を快適にすれば色々なアイデアが生まれて豊な人生を送れるのか、それとも家を敢えて不自由にしたり、家に非日常を取り入れることで人は成長ができるのか、意見が分かれるところです。

そして、日本の気候は昔に比べて年々厳しさを増しており、夏季においては災害クラスとも言われる窓を開けても温風しか入ってこない熱中症が発生する日が増えてきており、老人などでは死者が出ています。

 

家が便利すぎると人間が怠惰になる

安藤忠雄さんという世界的に有名な建築家がいらっしゃいます。無断熱の打ちっ放しのコンクリート造の建物を作って評判となりました。ただ、省エネ基準の義務化により現時点では無断熱住宅を建てることはもうできません。

その家は家の中の部屋を移動するにも、外に出て移動する建物だったので、雨の日は傘をさすような家の設計です。無断熱であり、住み心地は最悪だと言えなくもないですが、施主は満足しているようなのです。

無断熱ですから外気温の変化により日々自然を感じることができ、暑さ寒さに耐える精神力が身に付くようで、修行のような感覚だと思うのですが、施主は良くても施主の家族はどう思っているのか気になります。

安藤さん自身も「快適や便利さを求めるのではなく、住みにくいのを覚悟の上で自然に向き合いながら生活して欲しい。」と言っているそうです。

他にも「三鷹天命反転住宅」なんていう家もありますが、わざと床を水平にしなかったりと、使いにくい家にすることで、日常生活の随所で色々と考える機会を与える家のようです。

家自体を修行の場とする発想は凄いですね。確かに当たり前に得られるものが当たり前に得られない生活をすれば、小さなことでも当たり前のことに感動したり感謝できる人間になれると思います。

でも、ここまで行ったら家なんて作らないで仕事を辞めて、出家や晴耕雨読じゃないですけど、テント生活や小さな小屋をDIYで作って生活してしまった方が良い気がします。

ここからは家はそもそも何のためにあるのかという根源的な問いかけを考えてみたいと思います。

 

家の中に自然を取り入れる

田園風景を見て、自然を感じる方もいると思いますが、実は田んぼこそ究極の人造物です。天然素材を用いた家に住んで自然を感じるという発想もありますが、家もまた人造物の代表でしょう。

家の中にいても自然を感じられるようにする家作りを推奨している建築家は多々います。そして、家は外構などの外部まで含めて一体としてつながる空間としてデザインすべきであると考える方もいます。

自然素材が好きな方は安藤さんの建築に通じる面があって、自然を取り入れることで人生に色々な気付きを得られることが、家を高気密高断熱化するよりも、もっと大事なことなんだと考えるかもしれません。

ちょっと、ここが私の考えと違っていて、私は仕事でも随分と人と違った考え方をしているようなのですが、家にその発想転換のきっかけや修行の場を求めておらず、家は体調を整える場所だと思っています。

成長のきっかけは日常のどこでも得られます。今はインターネットを通じて部屋の中から世界を感じることさえできます。意識を持っていれば、どこにいても発想を変えたり、人に感謝することができると思うのです。

ただ、自然素材の利用を謳っている設計事務所などは、多くは商売が目的のようで、大量生産が得意な大手ハウスメーカーが参入してこない少量多品種の自然素材を使って棲み分けをしようとしているようです。

また、空気が綺麗でない都市部では家の外とつながった室内という発想はなかなか難しいものがあります。

 

自然な隙間という笑い話

家作りの笑い話として、家には自然な隙間がないと家が腐るという話があります。これは高気密住宅に納得ができない大工さんや大工さん出身の工務店の社長などが真面目な顔で言っている話です。

人造物である家において自然な隙間なんてそもそも可笑しな表現なのですが、風を通さないと木が腐るという日本家屋の習慣が、必要な隙間のことを自然と言い換えさせているのでしょう。

ただ、本当は家作りにおける高気密の施工を面倒に思っているだけという説もあります。

外壁や屋根には建物内部の湿気を排出するための通気層がありますから、家にも隙間があった方が換気量が増えて良いじゃないかと思うのも無理のないところです。

建築家ではなくても24時間の計画換気だけではなく窓を開けた換気が家には必要という発想な根強いところですが、窓を開けた換気をしても相対湿度が70%を超えた状態では、湿気の排出量は全然足りないのです。

そこで、考案されたのが小型のエアコン1台で家中丸ごとの除湿を低コストで実現してしまう方法です。つまり、室内の湿気を確実に排出するために家を高気密化し、窓を開けないというスタイルが生まれたのです。

 

高気密高断熱住宅に網戸はあっても良い、ただし・・・

結論から申し上げますと、私は高気密高断熱住宅に網戸はあっても良いが、網戸が無くても快適に過ごせる家を作った上で網戸を設置して窓を開けても良いと考えます。

一条ハウスにおいても多くの方がオプションの網戸を設置しているそうですが、これは窓を開けないと春や秋といった中間期に蒸し暑くて仕方がないという理由からだと思います。

窓の日射制御と空調を考えた完成度の高い高気密高断熱住宅では、窓を開けなくても快適に過ごせます。この状態であれば窓を開けても良いです。高気密高断熱住宅+風を感じる家というのも選択肢の1つでしょう。

ただ、夏季に熱帯夜が増えた現代では窓を開けても暑くて湿気った空気が入ってくるだけで夜間すら熱中症の危険性があります。

そうなると、夏季はエアコンを長時間利用することになりますが、エアコンを連続運転する想定で設置場所を考えていないものですから、今度は冷房病になって、エアコンの電源を切ってしまいます。

ここからは、堂々巡りで、暑くなったらエアコンを入れて、寒くなったらエアコンを切るという、住み心地が最悪な家になってしまいます。つまり、家の空調の完成度が低いのです。

家の空調の完成度が十分でないにも関わらず、家の風通しを推奨している建築家が大半ですから、そんな熱中症の危険性のある家を作るぐらいなら、私は窓を完全に開けない家を推奨します。

窓を開けなくても快適に過ごせて、かつ風通しを考慮した高気密高断熱住宅というのは、ハイレベル過ぎて多くの方は設計できません。そして、風通しをして快適なのは5月と10月上旬という限られた期間です。

それならば、風通しを捨てて、窓を閉めてエアコンの設置方法を検討した家の方が多くの人が熱中症や冷房病から救われる家ができると私は考えています。

だから私は高気密高断熱住宅には網戸は不要(網戸がなくても快適な家)と言っているのです。網戸があると温度調整ができると考えて思考停止を招くため、家の空調をしっかりと考えない人が増えてしまいます。

網戸の廃止はある意味、安藤さんの建築のように、一定の制限を設けると人は物事をよく考えるということと通じるものがあります。ただ、安藤さんの建築とは違って窓を開けない生活は快適性が向上します。

 

省エネ基準の義務化

建物の省エネのために2020年から建物に高気密高断熱住宅が義務化されます。これはQ値が2.7W程度の低い目標ですが、冬季に浴室でヒートショックによる死亡者を抑制する効果があると言われています。

一方で夏季の熱中症による死亡者が発生している状況であり、熱が籠る高気密高断熱住宅においては、対策をしないとさらに熱中症に罹る人を増やしかねません。

日中の外出時に窓を閉めて冷房を切って外出すると、高気密高断熱住宅は窓から入った熱が建物に溜め込まれ、夜間に窓を開けても家が涼しくなりません。

また、近年は猛暑日が連発して、超熱帯夜になり夜間に窓をあけても、温風しか入ってこない事態になっています。こうなると、早合点して建物の高気密高断熱住宅には反対する人が出てきそうです。

政府はエアコンを積極的に利用するように呼び掛けていますが、そもそもエアコンを連続運転する事を考慮した間取りになっていない家が大半であり、エアコンからの冷気が人に直撃して今度は冷房病になる始末です。

これからの家作りはエアコンを連続して冷房運転しても寒くならない位置にエアコンを設置する必要があり、それは人から離れた場所だということです。

 

高気密高断熱を使いこなしてこそ「設計者」と言える

自分は自然素材や風通しを大切にしているから高気密高断熱住宅は作りませんというような建築家がいますが、私はその建築家がしっかりと高気密高断熱住宅の使い方を知っているのか甚だ疑問に思います。

高気密高断熱住宅は現状では多くのハウスメーカーが冬暖かく夏涼しいといった程度の利用で、十分に活用できておらず、春や秋といった中間期の暑苦しさと夏季におけるカビの発生と冷房の利き過ぎを招いています。

早合点してしまう人はやはり高気密高断熱住宅は温暖地には向いていないんだと思ってしまうでしょう。よーく、何が問題なのか分析してみると、事態が理解できると思います。

春や秋にオーバーヒートを起こす原因は窓の日射制御不足で最近の家には軒や庇がないから起きているだけです。そして冷房の利き過ぎはエアコンの設置場所の問題なのです。いとも簡単に問題は解決できます。

そして残るのは高温多湿な日本に付きまとうカビの発生です。窓を開けてもカビは室内で発生しますが、窓を閉めて除湿を行えば、確実にカビの発生を抑制できます。

カビの発生を抑制するために冷房期間が長くなると、エネルギーのムダであると早合点すると思いますが、一番光熱費の掛かるのは冬季の暖房代であり、高気密高断熱住宅は冬季こそ威力を発揮します。

ここまで高気密高断熱住宅を理解した上で、春先や秋に窓をあけて自然の風を楽しみたいというのであれば、私は良いと思います。つまり、高気密高断熱住宅の温暖地での挙動を理解しきって矛盾がない状態に設計できているからです。

高気密高断熱住宅を温暖地で活用するにはほぼ窓を開けない生活になっていきます。窓を閉めた生活はデメリットが大きいかというとそうではなくて、窓を閉める生活で一番重要なメリットは防犯です。

防犯という面からは女性や子供しかいない状態で、一階において人が侵入できる窓を開けざる得ない家は危ないと思います。つまり、防犯上において窓を開けないと暑くて仕方がない家であってはならないのです。

高気密高断熱化は省エネ法の義務化により、もう止められません。高気密高断熱を熟知して使いこなすか、昔ながらの窓を開けた設計を推奨するかは、設計者の力量にかかっていると思います。

 

日本家屋が何百年も闘ってきたもの

日本家屋が何と闘ってきたのかということを今一度深く考えてみて下さい。風通しを重視する家も、全館冷房によって除湿する家も闘っている相手は実は同じで、つまり日本家屋の敵は「湿度」なのです。

木材は昔においては手作業での加工ですから、建物を建てるということはそんな簡単なことではありません。そんな貴重な材料を末永く使えるように、風通しを重視した家作りがなされてきたのでしょう。

建物の風通しは、我々日本人の心の中にある文化であり、窓が小さかったり窓が開かないと閉塞感を覚えるまでに感じる、これまでの日本の家作りの基本中の基本です。

我々日本人の風通しを重視する生活習慣は、建物の構造を腐らせる腐朽菌や建物の表面を汚すカビ、そして病気やアレルギーを引き起こすダニ、さらには衣類害虫と闘ってきた結果だと考えられます。

その結果、窓が大きくて風を沢山取り込める建物は美しいと思えるようになったのではないでしょうか。家の快適さや暖かさよりも、この日本人が美しいと感じる価値観が家作りに大切であると説く建築家もいます。

しかし、私にはそれは目的と手段がひっくり返っているように見えるのです。手段に美しさを感じるということは多々あります。勝ち負けを度外視した正々堂々の勝負などまさにそれでしょう。

さて、日本人の闘ってきたものの正体が湿度だということを再度考えてください。建物の耐久性を損なう腐朽菌やカビ、害虫など、湿度が高ければ様々な生物が繁殖して建物を自然に返そうとするのです。

これまでの日本家屋は隙間だらけで湿度をコントロールする術がなく、建物の外側は通気層工法などで腐朽菌を抑え、室内については窓を開けた風通しでカビやダニの発生を抑制してきました。

しかし、室内のカビやダニを根本的に解決する手段が見つかったのです。それは、高気密を利用して家中を丸ごと除湿することです。しかも小型のエアコン1台あればできる非常に低コストで実現できる方法です。

これまでの気密性の低い家では、湿度の高い外気の流入量が多くて、除湿がままならなかったのですが、それに加えて電気代が増えてしまうため、庶民の手がでるものではなかったでしょう。

しかし、高気密高断熱住宅の性能を使いこなせば、高気密を利用して除湿を行い、高断熱を利用して電気代を抑えることができます。

高気密高断熱住宅を冬に暖かくて夏は涼しい家と捉えている人が大半ですが、実は多くの方は高気密高断熱住宅の使い方を知らずに、冬以外は相変わらず窓を開けた風通しによってカビやダニの発生を抑制しようとしているのです。

 

私が辿り着いた答えは「住み心地とは防犯と空調」

結論から申し上げますと、注文住宅を四軒建て、いま「住み心地」という言葉を改めて考えると、住み心地の良い家は、防犯と空調(特に湿度管理)がなるべく低コストに両立した家だという答えに私は到達しました。

冬に暖かくて夏に涼しいということは高気密高断熱住宅では少ないエネルギーで実現できるため、もはや24時間の全館冷暖房は遠慮せずに手に入れるべきものであると思います。

さて、それ以外の住み心地について順番に説明すると、不自由な家にするかしないかは置いておいて、まず自然を感じる家にするかについてです。

建設地が都市部であれば、鳥のさえずりなどの音や草木の香りを楽しむことは難しいです。むしろ家の外の騒音や空気の悪さが気になりますから、逆に窓を開けたくても開けれないといった方が良いかも知れません。

自然を感じるということは、家の外部との関わりですから音を除けば、外気に影響される室温と湿度の変化と窓を開けて光と風を感じることとも言えるでしょう。

家の中で光を感じることについては私も賛成ですが、建物の密集する都市部では陽当りが悪くて一階の部屋まで冬季に日射を満足に得られる家は極わずかでしょう。

そして、家の中で自然の風を感じることは、防犯面と矛盾がないのか、もっと深く深く考える必要があると思います。そして、通風の最大の弱点は日本家屋の最大の敵である湿度問題を克服できないことです。

繰り返しますが、私にとって住み心地に拘った家とは、防犯と空調がしっかりした家です。窓を閉めて安全かつ快適に生活できることほど素晴らしいことはなく、むしろ安心感を覚えます。

住んでいる地域によって、住み心地の考え方は異なると思いますが、空調(特に湿度)については北海道以外はどこに住んでいても、高温多湿な日本の環境に悩まされると思います。

また、家を人生の気付きや修行の場所と捉えるのか、体や精神を休める場所と捉えるのかによって、住み心地の意味が人によって大きくことなってきます。

温暖地における高気密高断熱住宅のデメリットは私が述べているような方法で解決できますから、ぜひこれから家を建てる方は深く深く家の住み心地とは何なのかを考えてみると良いのではないでしょうか。